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インバウンドEC海外展開

The ¥9.5 Trillion Inbound Era: Don't Let Travelers Be One-Time Customers

インバウンド消費9.5兆円時代 — 旅行者を『一度きりの客』で終わらせない

Robert Hartley / 今西 卓 · HGGC

This article is currently published in Japanese only. Happy to walk through it in English on a call — or read it as a sample of our native Japanese writing.

2025年の訪日外国人旅行者数は4,200万人を超え、訪日消費額は9.5兆円に達しました(観光庁データ、Travel Voiceの報道による)。これは国内の旅行消費全体37.6兆円の25.1%にあたります。日本の旅行市場の4分の1は、すでに海外からのお金で動いているということです。

ただ、この数字を見て「うちはインバウンドとは関係ない」と感じる事業者の方も多いはずです。本稿で考えたいのはその逆で、訪日客が店頭であなたの商品を手に取った瞬間は、取引の終わりではなく始まりだ、という話です。

9.5兆円の中身 — 買物代は四半期だけで約5,900億円

直近の2026年1〜3月期を見ると、訪日消費額は2.3兆円(前年同期比+2.5%)。費目別では宿泊費36.7%、買物代25.2%(約5,895億円)、飲食費22.9%という内訳です。国・地域別では台湾(3,884億円)、韓国(3,182億円)、中国(2,715億円)、米国(2,592億円)が上位を占めます(いずれも観光庁データ、Travel Voiceの報道による)。

注目したいのは買物代です。3か月で約5,900億円。この中には化粧品、菓子、文房具、工芸品、衣料品——つまり「帰国後もECで買い続けられる商品」が大量に含まれています。宿泊や飲食は日本に来なければ消費できませんが、モノは違います。商品との関係は、旅行が終わっても続けられるのです。

帰国後に起きている「静かな機会損失」

海外展開のご相談で企業サイトを拝見していると、よくあるのは次のような構造です。

  1. 訪日客が店頭で商品を気に入り、購入して帰国する
  2. 使い切った頃、ブランド名や商品名をローマ字で検索する
  3. 日本語のサイトしか出てこない。英語の商品ページも購入導線もない
  4. 諦めるか、類似の現地商品や非公式の転売品に流れる
店頭での出会いという、広告費ゼロで獲得した「最も熱い見込み客」が、検索結果の時点で離脱している。これが「アフター・インバウンド」の機会損失です。

厄介なのは、この損失がデータに残らないことです。英語ページがなければ海外からのアクセスはそもそも伸びず、アクセス解析上は「海外需要はない」ように見えます。実際には、需要が観測される前に消えているだけ、というケースが少なくありません。SNSで商品が紹介されて海外からの検索が一時的に増える場合も同じで、受け皿がなければその波は数字に残らないまま引いていきます。

小さく始める打ち手3つ

越境ECのフルセット(多言語サイト、海外配送、現地通貨決済)を最初から組む必要はありません。順番としては、まず「検索されたときに受け止める」ことからです。

  1. 自社ブランドを英語で検索してみる。 ブランド名・商品名をローマ字で検索し、何が出てくるかを確認します。公式情報が出てこないなら、まず英語の商品紹介ページを1枚作る。すぐに買えなくても、「公式が英語で存在する」だけで転売品との差別化になり、信頼の起点になります。
  1. 「海外から買う方法」を案内するページを足す。 自前の越境対応を整える前に、既存の購入手段(海外発送代行サービスや海外マーケットプレイスなど)を公式サイトから案内するだけで、離脱は減らせます。重要なのは、検索して辿り着いた人を行き止まりにしないことです。
  1. 店頭で帰国後の接点をつくる。 レジ横や商品タグにQRコードを置き、英語の商品ページやSNSアカウントへつなぎます。旅行者が目の前にいる時間は短く、帰国後にこちらから接触する手段はほぼありません。接点は「日本にいるうちに」獲得するのが原則です。

いずれも大規模な開発投資ではなく、数日〜数週間で着手できる範囲です。しかも3つとも効果測定が可能です(英語ページへの海外からのアクセス、QR経由の流入、案内ページからの遷移)。まず小さく観測を始め、需要が見えた商品から越境対応を厚くしていく、という順番が現実的だと考えています。

なお、上位市場の顔ぶれを見て「英語より中国語や韓国語が先では?」と思われたかもしれません。理想を言えばその通りですが、最初の1枚は英語で十分なことが多い、というのが私の見解です。英語は検索の共通言語として機能します。まず英語で需要を観測し、数字が出た市場の言語に追加投資する方が、順番として無理がありません。

最初の海外顧客は、すでに日本の店頭にいる

9.5兆円という数字の本当の意味は、「年間4,200万人以上が、あなたの商品を実際に手に取り、財布を開いてくれる市場が国内にある」ということです。海外展開というと現地法人や展示会出展を思い浮かべがちですが、最初の海外顧客はすでに店頭に来ています。彼らが帰国後に検索したとき、受け皿があるかどうか。それだけで、その出会いが「一度きり」で終わるか、継続的な売上の入口になるかが分かれます。


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